新たなベースボール・テクノロジーがピッチャーをケガから守る

Baseball team jogging

多くのアスリートがケガによって選手生命を絶たれてきましたが、日本では新たな医療テクノロジーが野球少年の夢を支えています。

栗田 聡氏は、高校時代、日本のプロ野球球団で活躍することを夢見ていました。 彼は優秀なピッチャーであり、スター選手でした。 しかし、プロ入りと同時に、利き手である左腕の故障に見舞われました。 結局、以前の状態まで回復することはありませんでした。

栗田氏は数年にわたってフォームの改造に取り組み、腕を振る速度や精度を見直しましたが、何の効果もありませんでした。 最も辛かったのは、投げるたびに絶えず痛みが走ることだった、と彼は当時を振り返ります。

投手生命を絶たれた後も、彼は大好きなスポーツにかかわる仕事をしたいと考え、トレーナー兼理学療法士になる道を選びました。

現在 52 歳の栗田氏は、「今の目標は、ケガで少年たちの夢の道が閉ざされないように最適な方法を見つけることです」と語り、今まさに夢のマウンドに立とうとしている若者たちを指導しています。

選手に指導するコーチ

栗田氏が画期的なベースボール・テクノロジー・ツールの存在を知ったのは、つい最近のことでした。これは、ピッチャーのパフォーマンスを引き出すとともに、選手生命を脅かすケガを未然に防ぐためのモーション評価システムです。

このツールを開発したのは東京の新興企業である primesap 株式会社で、その中核を成しているのがアスリートの体の動きを記録するセンサー群です。 さらに、小型ながらパワフルなインテル® Edison モジュールも搭載しています。このモジュールは、センサーのデータを分析してグラフを作成し、選手が克服すべき不自然な動きを明らかにします。

アスリートのストレスを特定

不自然な動きは、運動グラフの滑らかな線の中で突出したポイントとして表示され、肩、肘、手首、膝、足首、腱、靭帯などにストレスがかかっていることを示します。

「投球によってケガが発生するかどうかを判断する上で最も重要なのは、投球時に関節が骨の軸に沿ってどのように回転しているかということです」と、primesap 株式会社の最高医療責任者を務める整形外科執刀医の渡邊 幹彦氏は語ります。

回転が滑らかなほど、ケガをする可能性は低くなると彼は説明します。

primesap 株式会社創設者の木村 岳氏と青山 哲也氏、

primesap 株式会社の創設者には、渡邊氏とともに、医療コンサルタントの経験を持つ CEO の木村 岳氏、モーション評価システムのソフトウェアを構築した最高技術責任者の青山 哲也氏が名を連ねます。

医師、スポーツトレーナー、理学療法士といった運動のプロフェッショナルは、primesap 株式会社のシステムが生成するグラフを分析して、ピッチャーのフォームの修正を提案します。

ツールが置かれた作業台

primesap システムの仕組み

primesap システムに使われているセンサー用のプラスチック・ホルダーは、3D プリンターで作成されています。 このホルダーによって、分析が必要なあらゆる部位にセンサーを装着できます。

「ピッチャーの場合は、手首、上腕部、肩、腰の部分にセンサーを取り付けます。 また、投球フォームもピッチャーにとって重要な要素です」と木村氏は語ります。

腕に装着した primesap システム

センサーでは同時に、ピッチャーのフォームの滑らかさも確認できます。これで、すべての可動部位が連動しているかどうかが分かります。あるいは、ストレスを示す不自然な動きも確認できます。

primesap システムでは、センサーが収集した情報を評価するのにインテル® Edisonモジュールを使用しており、投球時の加速度や回転数を記録するために、同じテクノロジーをボールの内部にも組み込んでいます。 インテル® Edison は、モジュールの長さが約 3.8cm しかなく、コンパクトなサイズが特長です。

インテル® Edison モジュールを採用した primesap ベースボール・テクノロジー

primesap システムは、インテル® Edison モジュールを組み込んだボールの情報と体の動きのデータを使って、ピッチャーの体とボールの間の完全な関係図を出力します。

栗田氏は現在、東京の多摩川沿いにある野球場で、primesap システムと彼の野球に関する生理学の知識を駆使して、14 歳の田村少年に投球フォームを指導しています。

投球するピッチャー

目黒西リトルリーグ・チームの主力投手を務める田村少年は、非常に速いストレートや切れ味抜群のチェンジアップなど、さまざまな投球テクニックを持っています。ケガさえなければメジャーリーグで十分活躍できるでしょう。

栗田氏は、センサーを搭載したプラスチック・ホルダーを田村少年の上腕部、肘、手首に取り付けて、彼の投球フォームを観察し、 いくつかフォームを見た後、より効果的でケガの可能性を最小限に抑えられるフォームを指導しました。

投球フォームの微調整

「オーバースローで投げるように指導するコーチは数多くいますが、彼らはオーバースローが最も速い球を投げられるフォームだと信じているんです」と渡邊氏は語っています。

しかし、オーバースローは激しい下方向の動きを伴い、ピッチャーの耳のそばを通過する弾道でボールを押し出すため、明らかに不自然だ、と彼は指摘します。 オーバースローで投げると、体が必然的に傾き、肩、肘、手首に負担がかかってケガをしやすくなります。

ベースボール・テクノロジー

primesap システムのモーション評価グラフでは、肩にかかる過剰なモーションストレスを読み取ることができ、それを基に投球フォームの良し悪しを判断できます。

トレーナーの役割は、最も滑らかで自然な投球フォームを見出して、選手がフォームを微調整して最高の成果を得られるようにサポートすることです。 腕を斜めに振り下ろすスリークォーター・フォームでは、ボールはピッチャーの耳から 30cm 離れた軌道を通過します。スリークォーターとオーバースローの間、あるいはサイドスローくらいが適切でしょう。

さらに、グラフを使えば、リトルリーグの選手でも理解できる言葉で正しい投球フォームを説明することもできます。

primesap 株式会社はボクシングと水泳用のシステムも開発済みで、スキーと短距離走用も 2016 年末までにリリースする予定です。

栗田氏は、自分が投げていた頃にこうしたテクノロジーがあれば良かったなと思いながら、次世代の少年たちの夢をサポートできることのありがたさを感じています。

 


編集者より: この驚きの新体験シリーズでは、コンピューター・テクノロジーの活用による素晴らしい体験をご紹介していきます。 コンピューター・テクノロジーが、科学、メーカー・ムーブメント、ファッション、スポーツ、エンターテインメントなどに新たな体験や発見をもたらすストーリーをお楽しみください。 これらのストーリーを支えるテクノロジーは、驚きの新体験で詳しくご覧いただけます。

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